診療報酬改定で注目される『口腔管理』―OHATを活用した実践のポイント―
■記事概要 令和8年度(2026年度)診療報酬改定では、「リハビリテーション・栄養・口腔」の一体的な取り組みや医科歯科連携の推進が打ち出され、口腔管理の重要性がこれまで以上に高まっています。本記事では、改定のポイントを整理しながら、なぜ医療・介護の現場で口腔管理が重視されているのか解説します。また、歯科専門職でなくても活用できる口腔アセスメントツール「OHAT(オーハット)(Oral Health Assessment Tool)」の役割や、多職種連携・歯科連携を円滑に進めるための実践的な活用方法について紹介します。
はじめに
医療・介護の現場で利用者さん、患者さんのケアに携わる皆さま、令和8年度(2026年度)の診療報酬改定において、「口腔管理」がかつてないほど重要視されているのをご存じでしょうか。今回の改定では、急性期から回復期、慢性期に至るまで、全身の回復における「口」の役割が再評価され、関連する加算が大幅に見直されました。
本記事では、最新の診療報酬改定の資料を読み解きながら、なぜ今これほどまでに口腔管理が求められているのか、そして、現場で確実な評価と連携を行うための強力なツールである「OHAT(Oral Health Assessment Tool:口腔アセスメントツール)」の実践ポイントについて解説します。
1. 令和8年度の改定が示す「口腔管理」の重要性
今回の改定において、国が医療現場に求めている大きなメッセージは「全身の回復のために、多職種で口の中を評価し、必要な場合は速やかに歯科と連携する体制を作ること」です。具体的には、以下の2つの大きな柱が打ち出されました。
①リハビリテーション・栄養・口腔の一体的取り組みの更なる推進
患者さんのADL(日常生活動作)の維持・向上、早期離床や経口摂取の推進を目的に、多職種が連携して評価・計画策定を行う取り組みがさらに強化されました。
急性期病棟等における「リハビリテーション(以下リハビリ)・栄養・口腔連携体制加算」の要件が見直されたほか、地域包括医療病棟や地域包括ケア病棟においても新たに「リハビリ・栄養・口腔連携加算」の算定が可能となりました。
これにより、幅広い病棟で「口腔管理」が標準的なケアとして求められることになります。
② 医科歯科連携の強力な推進
今回の改定の目玉の一つが、医科歯科連携の評価新設です。歯科診療を行わない病院であっても、入院患者の口腔状態に課題があり、医師が歯科受診を必要と判断した場合に、あらかじめ連携している外部の歯科医療機関へ患者を紹介し、入院中に歯科診療が行われれば「口腔管理連携加算(600点)」が算定できるようになりました。
また、依頼を受けて訪問歯科診療を行った歯科側にも「医科連携訪問加算(500点)」が新設され、双方向での連携が強く後押しされています。
2.なぜ今「OHAT」が必要なのか?
改定内容を見ると、「口腔状態の評価を行う」「課題を把握し、歯科受診が必要と判断する」というプロセスが随所で求められています。
しかし、歯科医師や歯科衛生士が常駐していない病棟において、看護師や介護スタッフなどの非歯科専門職が、どのようにして客観的に口の中を評価すればよいのでしょうか。評価者の主観的な「口が汚れている」といった感覚だけでは、チーム内での情報共有や医師への適切な報告は困難です。
そこで重要になるのが、客観的なアセスメントツールであるOHATです。OHATを用いれば、口唇や舌、粘膜、唾液、残存歯などの状態を数値化し、誰でも簡便かつ客観的に評価することができます。
3.OHATを活用した実践ポイント
現場でOHATを導入し、新設された口腔管理加算を算定しつつ、質の高いケアを提供するための実践ポイントを2つ紹介します。
実践ポイント①:漏れのないスクリーニング体制(クリニカルパス)の構築
新設された「口腔管理連携加算」を確実に算定するためには、病棟スタッフが日常的にスクリーニングを行い、問題があれば速やかに医師へ報告し、歯科紹介へとつなぐフローが必要です。
入院時や週に1回の定期評価としてOHATを組み込み、「OHATスコアが〇点以上であれば、医師に歯科連携を提案する」といった明確な基準(クリニカルパス)を設けることが効果的です。これにより、スタッフ間の評価のばらつきをなくし、必要な患者さんを確実かつ迅速に歯科専門職へつなぐことができます。
実践ポイント②:多職種カンファレンスでの「共通言語」としての活用
「リハビリ・栄養・口腔連携体制加算」などを算定するためには、医師、看護師、理学療法士等、管理栄養士などの多職種による評価と計画策定が必須です。
カンファレンスの場で、OHATのスコアを用いて「舌の乾燥や汚れが目立つ」といった具体的な情報を共有することで、管理栄養士は栄養状態や食形態を、理学療法士は離床や食事時の姿勢を検討するなど、具体的な介入計画をチーム全体で立てることが可能になります。
まとめ
令和8年度の診療報酬改定では、「リハビリ・栄養管理・口腔管理」の一体的な取り組みを推進する方向性が示され、多職種による連携の重要性が一層高まっています。OHATを活用して患者さんの口腔状態を共通の指標で評価・共有することは、口腔内の問題の早期発見や適切な口腔ケア、歯科専門職との連携につながります。患者さんが「食べる喜び」を取り戻し、誤嚥性肺炎などのリスク低減やQOL(生活の質)の向上を目指すうえで、OHATは多職種をつなぐ有効なツールとなります。
今回の改定を機に、ぜひ皆さまの施設でもOHATを活用した「積極的な口腔管理・医科歯科連携」のシステム構築に取り組んでみてはいかがでしょうか。