自施設で行っている口腔ケア
適切に実施できていますか?
近年、口腔ケアは虫歯や歯周病の予防だけでなく、全身疾患の予防やQOL向上にも重要であることが明らかになってきました。しかし、高齢者の多くは適切な口腔ケアを受けられていないのが現状です。
口腔ケアが不足すると、糖尿病や心疾患、誤嚥性肺炎などのリスクを高め、認知症の発症にも関与する可能性があります。さらに、口腔機能の低下は、食べる楽しみやコミュニケーションの制限にもつながり、QOLを低下させます。
高齢者の口腔管理と口腔ケアは、医療経済の視点から見ても効果が見込めることがいわれております。
診療報酬改定や介護報酬改定でも口腔管理、口腔ケアが関連する加算も設定され、業界全体で適切に取り組んでいくことが一つの潮流となっております。様々な医療機関、介護施設が適切で質の高い口腔管理、口腔ケアを実践していくためにも、歯科医療従事者との連携を行っていくことが注目されています。
適切な口腔管理・口腔ケアは、口腔状態の評価(アセスメント)を実施することから。
OHATを使って
口腔状態のアセスメントをしてみよう!
OHAT(オーハット/Oral Health Assessment Tool)は、高齢者の口腔状態を簡便で客観的に評価する、口腔アセスメントツールです。
口唇、舌、歯肉・粘膜、唾液、残存歯、義歯、口腔清掃、歯痛の8項目を3段階で評価し、口腔状態をスコア化することができます。OHATの日本語版であるOHAT-Jは8項目の3段階の状態が画像で定義されており、視覚的に評価することができます。歯科の専門的知識のない、医科の医療職も介護職も簡便に評価することができます。
また、口腔ケアのポイントは実施者が適切にムラなく実施することであり、口腔ケアの標準化が重要です。口腔ケアの回数や内容は、口腔内の汚染状況やADLの自立度などによって変化するため、定期的な口腔内の評価(口腔アセスメント)が重要となります。
OHATを用いたアセスメントで口腔状態を数値化してケア内容を決めることで、口腔ケアの手技や介入回数の統一ができます。歯科との連携を行う際の共通言語にもなります。
※注意※ OHATを導入するときには評価のすり合わせが必要です。
各項目のすり合わせ用の資料やOHATの練習問題も掲載されていますので、まずは下記のサイトをご覧ください。
オリジナルのOHATは、施設入所の要介護高齢者の口腔アセスメント用にオーストラリアのDr. Chalmersらによって開発された世界的な口腔評価ツールとなります。口腔状態の評価を誰でも簡便に実施できるツールであり、多くの言語に翻訳されています。
日本国内においては、東京医科歯科大学の松尾浩一郎教授が和訳した日本語版(OHAT-J)が普及しています。
日本語版OHAT(OHAT-J)の詳しい評価方法や論文などは、東京医科歯科大学 大学院地域・福祉口腔機能管理学分野のサイトをご覧ください。
OHATの活用方法
OHATは、医療機関、介護施設、在宅など、様々な場面で活用できます。
医療機関での活用
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歯科診療の初診時や定期検診時に実施: 患者さんの口腔状態を把握し、口腔ケア計画に役立てる。
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歯科治療前後の口腔ケア効果の評価: 治療の効果を客観的に評価し、必要に応じてケアプランを修正。
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入院患者さんや高齢者の口腔ケアの頻度や内容の判断: 個々の患者さんに合わせた適切な口腔ケアを提供。
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チーム医療における情報共有: 医師、歯科医師、看護師、介護福祉士など、多職種間で口腔状態の情報共有。
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嚥下障害のリスク評価: 誤嚥性肺炎予防のための口腔ケアの実施。
介護施設での活用
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入所者さんの口腔状態の定期的な評価: 口腔ケアの必要性を判断し、適切なケアを提供。
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口腔ケア計画の作成: 個々の入所者さんに合わせた口腔ケア計画を作成。
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介護職員への口腔ケア研修: OHATを用いた口腔ケアの評価方法と実践方法を学ぶ。
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入所者さんやご家族への口腔ケアの啓発: OHATを用いて口腔状態を説明し、口腔ケアの重要性を理解してもらう。
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歯科医師や歯科衛生士との連携: 定期的な口腔検診や専門的な口腔ケアの実施。
自宅での活用
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介護者による口腔ケアの評価:口腔状態を把握し、適切な口腔ケアを実践。
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家族による口腔ケアの支援: 家族が口腔状態を評価し、必要なサポートを行う。
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口腔ケアの記録・管理: OHATを用いて口腔状態を記録し、経過観察。
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医療機関や介護施設との情報共有: 自宅での口腔ケア状況を医療従事者に伝える。
OHATの評価結果を記録・共有することで、
チーム医療を促進し、
口腔ケアの質向上に役立ちます。
OHATの
実施タイミングや頻度
OHATを用いた口腔アセスメントは、高齢者の口腔状態を定期的に評価するために活用できます。
またOHATの実施頻度は、患者さんの口腔状態やリスクによって異なります。一般的には、急性期の場合1週間に1回、慢性期の場合は1か月に1回を目安に実施します。スコアに応じて随時口腔ケアの内容を見直します。
OHAT
実施時の注意点
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患者さんのプライバシーに配慮する。
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正確な評価を行う。
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評価結果を記録する。
OHATは、高齢者の口腔ケアの質向上に役立つツールです。適切なタイミングで実施することで、口腔ケアの効果を高めることができます。